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  [企業訪問] 家具工房 carula(カルラ)
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  100年後の職人さんに笑われないものを作りたい

家具工房 carula(カルラ) 代表 神原慎一さん



豊中駅から線路沿いに岡町方面へ徒歩5分。開け放した作業場からはギュイイイーンという音やカンカンと何かを叩くような音が聞こえ、なにやら大きな機械と、ぎっしり並んだ木材が見える…。「木の家具 木の小物」「OPEN」と書いて立てかけられた看板がなければ、何かの工場?と思ってしまいそうな店が、「家具工房 carula」さんです。ゆっくりと、自分の中にある思いを表せる言葉を探しながら話してくださる、代表の神原慎一さんのお人柄そのままのような、手間ひまかけたオリジナル&オーダーメイド家具がここから生まれています。




神原慎一さん
 



●最初に出たのは「経済学部」

 「幼い頃から、インテリア好きだった母や祖母に連れられて家具屋さんを回ったり、絨毯を見に行ったりしていたので、『家具』とか『木工』が好きになっていったんだと思うんですよ」とおっしゃる神原さんですが、最初に卒業したのは「たまたま受かって」しまった大学の経済学部。でも「まったく興味なくって」、卒業したとたんに、やっぱり好きなインテリアの道への方向性を探り始めます。
 当時は“インテリア・コーディネーター”という職種が流行りかけていた頃で、そちらへ行こうかとその学科を設けていた専門学校の門を叩きますが、(インテリア・コーディネーターというのは女性の多い職種だったので)「男やから建築科のほうがええんちゃう、って言われて、建築も好きだったので建築の専門学校へ」。そこも卒業して設計事務所に入ったものの、図面を引いたりする仕事は面白かったけれど、その事務所の主な仕事は神原さんの期待していたようなものではなく、「こんなん、違うなあ、と思って」。



●「一人でイチから作り上げる」家具づくりがしたい
 
 じゃあ、何を、と考えた末にたどり着いたのが、子供の頃から親しんだ「家具」。「家具でも古い家具が好きだった。京都に古い家具をリメイクしている店があって、道ばたで作業してたりするのを見ていて、面白そうやなーとは思ったけど、自分はやっぱりイチから作ってみたいと」、もともと独立志向だったこともあって、木工技術を身につけるべく、今度は「職業訓練校」に行こうとしました。ところが、訓練校で学べるのは工場で大量生産される家具作りの技術だとわかり、「神原君がしたいことを勉強できるのはここ」と教えてもらった長野県立上松技術専門校に入学。家具など、ひとつのものを一人で作り上げる技術を学べるこの学校で基本を身につけ、卒業後長野県の木工・建築会社で3年勤めて、木材の知識やデザインセンスを磨いた後、2009年、高槻市で「家具工房carula」を設立しました。
 時に神原さんは35歳。若い、けれども、自分が何をしたいのかを考え抜いた上で、その実現に必要な技術をしっかり身につけた、確かな船出でした。
(2010年、豊中市の現在の場所に移転)




家具工房carulaさんの外観。
木のボードが目印



●「こんなん作るのはもうイヤ」というものを作りたくない

  家具工房carulaさんは、すみずみまでデザインセンスのいいホームページも設けておられますが、これも神原さん自身が「最初は人に頼んでたけど、ああやってこうやって、って注文つけてたら、自分でやったほうが早いな」と、本を片手に作ってしまったもの。ホームページやブログに掲載されている家具や、工房に置かれている家具の工夫について話し始めると、言葉が尽きることのない神原さんを見ていると、やはり「自分で作る」「工夫する」こと、「美しいもの」が徹底して好きな人なんだなあ、と納得させられます。
 無垢材しか使わないのも、もちろんそれが美しいから。ベニヤの家具は、時間が経ったらただ汚れて行くだけ。無垢材は、時間も傷も「味」に変えてしまうとおっしゃいます。

 例えば、天板や引き出しの前板の縁をすべて45°に落として、前から見ても横から見ても縁が目立つことなくスキッとした印象に仕上げた、ウォルナット材のデスク。
 例えば、木工をやったことのある人でないとその違いには気づかないと思うけれど、サンダーという機械ではなく、カンナを使うことでピシッとした平面を作った家具の数々。
 例えば、坐面も脚もすべてカンナで仕上げ、座り心地がいいのはもちろん、見た目も絶対にキレイ!と自信を持って言える、小さなスツール。
 このスツールは、独立したての頃に作って、その手のかかり方から「2万円」の値段をつけたら「全然売れないんですよ。みんなもっと安いのがいいって」。それなら、と普段は使わない機械を使って、「イベントでの販売用に」と安いスツールも作ってみたそうです。確かに売れたけれど、「ぜんぜん気に入ってなくて。イベント用にしてもこんなん作るのはもうイヤなんです。もうしないようにしてるんです」と声を強められたところに、美意識と職人の挟持が見えました。





神原さんが手をかけているのが、
「もうこんな作るのイヤ」というイベント用スツール。
右側にちらっと見えているのは、
きちんと手をかけた自信作。






●これは自分の作品、と胸を張って言えるか

 ある日のブログにも、
 「ご相談頂いているローボードとダイニングテーブル、いつも以上にデザインに時間を掛けさせて頂いています。もう1月程は経っているでしょうか。出てきそうで出てこない。もう少しなんですけど、妥協はしたくないので…『これやっ!!』って言うのが、出来るまで悩ませてもらいます。」
と書いておられる神原さん。
 「注文してくれたお客さんのご希望を聞いて、その家具が置かれる部屋やお宅の雰囲気も見て、最初のパース(完成予想図)を書くんですけど、それをそのまま作ったら〜自己満足なんですけどね〜できあがりが想像できてしまって面白くないんですよね。製作にとりかかってからも、ここはこうしたほうがいいな、っていうのがどんどん出てきて、デザインは変わって行くんです。自分の「色」も…ちょっとは入れたいし」。
そういう神原さんですから、ついつい、これを全部値段に反映はできない、というぐらいの手間をかけてしまうこともあるようです。
 「お客さんにしたら、高くなるんならそんなことしてくれなくていい、ってなりますよね。でも、それでもぼくがやりたい場合には、もう金額とかお金とかに関係なく、『やらせていただきたいんです』ってお願いしてやらせてもらうんです。そうしないと自分で納得いかない、ってだけなんですけど」





家具工房carulaさんの作業場。
材木を扱うのでホコリがすごいそうです。



●100年先、200年先に「アンティーク」になる家具を作る

 古い家具の修理もしておられる神原さんですが、戦中・戦後の頃の家具を修理のために分解すると、がっかりすることが多いといいます。
 「物がない時代のものなんで仕方ないんですけど、見た目はしっかりしてても中をよく見るとペラッペラの板使ってたりとか、前面だけ分厚い板にして、見えないところはほんとに材料を節約して節約して、しかも構造がしっかりしてないとか」。
 そういう家具を目にするたび、神原さんが自分自身に確認するのは、
 「たとえば、100年後に、ぼくが作った家具を修理しようとした職人さんに『なんやこの仕事は』って思われたくない。100年、200年先に“アンティーク”になる家具を作りたい、と思ってこの仕事をしているんだから、その未来の職人さんに笑われないような家具を作りたいんです。」ということ。
 国内・国外のさまざまな木の性質を知り、その特質を活かしながらお客さまに喜んでいただけるデザインを考え、仕上げも上質な素材を使ってたっぷり時間をかけて…と、製作に手間も時間もかけるのは、ただの「こだわり」ではありません。そうすることで、100年後、200年後の人にも時を経てさらに深みを増した美しい家具を使ってほしいから。
 笑うと目のやさしい神原さんは、ひょっとすると、とてつもない野心家なのかもしれません。



事務所にオブジェのように置いてある
「耳付き一枚板」。
よく見ると目盛がついていて
「持ち歩ける身長測定器」だそうです。 




●休みの日には休む。「いいもの」をたくさん見たい

 carulaには昨年12月から「定休日」ができました。それまでは「用事がある時は休み」ぐらいで、特に休みは設けず、特に独立したばかりで仕事が少なかったころは「家にいてもすることがないから店に出てきてデザイン考えたりしていた」神原さんが、定休日を作ろうと思ったのは、「休む時にはきちんと休んで、何も考えない日を作ったほうが仕事のためにもいいな」と気づいたから。今年から、休みの日にはできるだけ、美術館などに行こうと決めたそうです。
 「あんまりよくわからないんですけど、絵画とか陶器とか、わからないなりに『ホンモノ』を見ることはいいことだと思うので。それが、後々〜いつかわかりませんけど〜自分の中から出てくるんじゃないかと思うんです」とおっしゃる神原さんの視線は、まだまだ先を見つめておられるようです。


 

 carulaの家具が好きなあまり、「壁も神原さんに塗り替えてほしい」と頼むお客さんまでいらっしゃるとのこと。長野で勤めていた会社が、有名な木曽漆器の産地にあったのでよく漆を使っていた関係で、漆職人さんの仕事を見たり手伝ったりしていて覚えた漆塗りの技を、鉄板や和紙など木材以外の素材に使って、家具に独特の味を加えたりもしている神原さん。新しいデザインを思いついた時、家具が仕上がりつつある時、どんな工夫をしようかと考えている時、ブログやfacebookに書き込まれる数行の文字から、神原さんのワクワクしている様子が伝わってきます。その様子を想像するだけで、心の底からこの仕事が好きなんだなあ、となぜかこちらもうれしくなってしまうのでした。


2012.2.10取材 八代田(ライター)






 家具工房 carula(カルラ) (神原慎一さん)
 HP: http://carula-furniture.com/
 所在地: 豊中市岡上の町1-4-9
 TEL:06-6846-2558
 営業時間:11時〜19時
 定休日:水曜日(祝日の場合は木曜日)、第2・第4日曜日





 
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