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  [企業訪問] 根岸広輝弦楽器工房
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  弾き手の気持ちを汲み取り、寄り添える職人に

根岸広輝弦楽器工房 根岸広輝さん


 facebookの「好きな言葉」に、「棚から牡丹餅」と書いておられる根岸さん。やさしい目でゆっくりとジョークを交えて話される様子から、つい笑ってしまったのですが、「棚から牡丹餅、はもちろん好きなんですけど、棚を揺らすから牡丹餅が落ちてくるんですよね。そういう気持ちもあるんです。棚を揺らさないことには牡丹餅は落ちてこない」と、“明確な目的を持って突き進む”タイプではないとおっしゃりながら、秘めた意志の強さ、前向きであり続ける心構えを感じさせる、弦楽器職人さんです。

 




根岸広輝さん

 

●スタートはクラブ活動

 
根岸さんがマンドリンと出会ったのは、同志社香里中学に入学した時。マンドリンクラブの新入生勧誘をしていた先輩がジュースやアイスクリームを奢ってくれ、「毎日来たら毎日奢ったる」と言ったのについつられて(でも2日目からはアイスクリームは奢ってもらえなかった)、がきっかけだったそうです。とはいえ音楽は好きだったし、「聞いていったら?」と言ってもらった合奏は面白くてそのまま入部。

  部活の体育会系のノリや練習は好きではなかったというものの、さぼりながらも練習すれば少しずつでも上手くなり、そうなると面白くなって、同志社大学に進んでからもマンドリンを続け、楽器店に入りびたるようになりました。




修理中の楽器と根岸さん
(手に持っているのがマンドリン)


●ひょんなことからイタリア留学

 大学を出てからも、30歳ぐらいまで「まあ、かっこよく言えば“自分探し”」をしていたという根岸さんですが、楽器店通いは続き、もちろんオーナーさんとも親しくなります。職人さんたちの仕事を見る様子から、「ちっちゃい頃から、物ができていくのを見るのが好きだった」根岸さんを見込んだのか、オーナーさんが「ふらふらしてるんなら、マンドリン作り勉強してみいひんか」と声をかけてくれたのは、そんな頃のこと。実はマンドリン職人さんも高齢化が進んでいて、そろそろ次の世代を育てていかなければ、と考えておられたようです。 

  最初は、店からイタリアの楽器工房に修行に行かせるから、ということでしたが、それがダメになり、お詫びにせめて1週間だけでも、と行かせてくれた半ば観光旅行のようなイタリア行きで、偶然に現地の楽器メーカー営業マンから「ギターやマンドリン作りを教えてくれる学校があるよ」と聞き、帰国してから調べて、ミラノにある楽器製作学校「Civica Scuola di Liuteria di Milano」に受け入れてもらえることになりました。



作業台

●合計7年半、専門用語にも苦労

 クラブでマンドリンを弾き、楽器店で見習いのようなことをしていたといっても、あくまでまだ素人だった根岸さんは、この楽器製作学校で「基礎科」「修理科」「製作科」とそれぞれ2年間のコースを3つとり、一口にマンドリンといっても、日本でポピュラーなナポリタンだけでなく、ミラニーズ、ブレシアン、ジェノイーズといった種類があることなど、基礎の基礎から学んでいきました。

  もちろん授業はイタリア語。会話だけでなく、楽器や部品、工具などの専門用語なども覚えなければなりません。昼は楽器学校、夜はミラノ市が外国人向けに開いている語学教室に通い、辞書にも出ていない専門用語は何度も聞き、書いて覚えたそうです。

  職業訓練校のような位置づけの学校だったので、ここにくれば手に職がつけられて就職できると聞いたから、という現地の若い子もいたそうですが、やはり、音楽と楽器が好きで興味がなければ、作り方を覚えても職業として長く続けるのは難しい、と根岸さんはおっしゃいます。マンドリンを弾くのも好きで、“ものを作る”ことが好きな根岸さんの熱心さが伝わったのか、6年間(プラス1年間の病気休学と半年間の諸手続き)の勉強を終えた時には、何人かの先生達が、「個人的にうちの工房に通っておいで」と誘ってくれるまでになっていました。


カムクランプ
(部品を接着する時などに
しっかり押さえるためのもの)


●調べる、試す、経験の積み重ねが音色を作る

 実際に職人としてマンドリンの製作や修理を手がけるためには、学校で教えてもらったことだけでは足りません。博物館や個人のコレクターが持っている楽器を見せてもらい、内部はどうなっているのかを、歯医者さんが使うような棒の先についた鏡を使って観察することも大切な勉強のひとつ。常に、なぜこの楽器はこんな音が出るのか、と考えながら楽器を見て、聞きます。

  しかし、実際に弦を張って弾いてみるまで、狙った音が出るかどうか確実にはわからないのが楽器というもの。思ったような音が出なければ「なぜ出なかったんだろう」と考え、力木(ちからぎ=内部に張り渡してある補強用の木材)の寸法や厚み、位置を少しずつ変えてみて、「こうすれば、こういう音になるのか」と確認して、その経験を積み重ねていく以外に職人としての腕をあげていく方法はありません。

  だから、大きな修理の依頼が来て、楽器を分解してもいいとなったら千載一遇のチャンス。すみずみまで徹底的に観察し、試し弾きをしてみて、自分の中に経験として蓄えていきます。



部品接着用クリップ

●自分にしかできないマンドリン製作・修理を

 昨年(2010年)11月に帰国、今の市役所前の工房を見つけて税務署に届けを出したのが今年の4月、と、根岸広輝弦楽器工房はスタートしたばかり。仕事は、楽器店さんを通しての修理依頼がほとんど、とのことですが、実は(楽器店さんを無視するということでなく)、お客さん=マンドリンの弾き手と直接話をしながら修理なり製作なりをしていきたい、というのがひとつの目標。弾くのが男の人か女の人か、若い人かお年寄りかで弦の張り方ひとつでも違ってきます。「楽器もそういう微妙な調整をしてあげたい」。

  ホームページに、ミラニーズ、ブレシアン、ジェノイーズというマンドリンの種類、あるいはリュートという広く知られているとは言えない楽器の名前を挙げているのも、「自分にしかできないことを」という意欲のあらわれです。日本には、マンドリン職人を名乗る人は全国に10人ほどしかいないそうですが、そのほとんどが日本だけで修行した方々で、当然、日本で一番ポピュラーなナポリタン・マンドリンしか扱ったことがないだろうとのこと。ケンカをするわけではないが、そういう職人さんとの違いをわかってほしくて、あえてホームページにも書いている、とのことでした(「でも、実際にはそういうマンドリンの注文は10年に1度あったらいいほうでしょうね」)。

  根岸さんの場合、自分もプレーヤーとしてマンドリンが弾けるので、弾き手の感覚がわかるのも強みのひとつ。「今の音はちょっと寒々しい、もっとあったかい音を出したい」といった注文をされた時にも、「料理にちょっと塩気を足してと言われた時に、それが塩ひとつまみなのかドサッと入れてほしいのか、感覚は人それぞれ。それを捕まえるのがむずかしい」と言いながらも、大体こんな感じかな、こういう音じゃないかな、と想像することができます。

  「電気製品の修理やないんやから、右から左へ、はい修理きました、注文きました、はいできました、って流してしまいたくない。今はお客さんの顔が見えないことが多いけど、できるだけ実際にコミュニケーションとりながらやっていきたいんです」。





コルクの置き台も根岸さんの工夫
●職人仕事と経営の両立

 まだ工房を構えて4ヶ月、先輩の職人さんから経営感覚が身に付いていないところがある、と指摘されたそうです。とある修理仕事を見せたところ「これに何日かけた?」「3日です」「3日かけたってこれに3日分の工賃は請求でけへん、1日で終わらせな商売としてやっていかれへんで」と言われたとか。そういう「仕事としてやっていくための」アドバイスを受けることは多いので、これから考えていかなければならないところだと気を引き締めているとか。

  マンドリンの専門誌に記事を書いたり、ホームページはもちろん、mixi、facebookやtwitterなども実名で登録して、インターネット検索で発見してもらえるようになればいいなあと思ってはいるけれど、今のところその方面からの依頼はほぼゼロ。やはり、馴染みの楽器店さんを通した依頼、出身校の先輩・後輩のつながり、その関係からの口コミというのがほとんど、とのこと。「まったく見ず知らずの方が、“すみません、こちらで修理やっていただけるんですよね”って来てくださるようになるぐらいになりたいんですけど、まだまだですね(笑)」。





塗料類
●仕事と趣味の切り替えが課題

 今、ちょっと悩んでいるのは自分の時間管理と、趣味との切り替え。
  9時-5時の仕事ではないので、納期が決まっているものならともかく、「いつでもいいですよ」と言われると、どんどん先延ばしにしても誰にも文句は言われない。自分自身でペースを作っていかなければならないのがむずかしいし、収入のことを考えなければいつまで休んだっていい、そこが怖い、ということです。

  もうひとつの悩みは、趣味が「マンドリン演奏」であるということ。現在、大阪のアマチュアマンドリンクラブに参加しているそうですが、「普通の日には仕事でずーっとマンドリンいじって、さあ、休みや!って結局またマンドリン触ってるわけでしょう?クラブに参加しているのも、いわば、“顔つなぎ”のつもりもあるので、どこかで“仕事”の意識が残ってる。そこに、たまたま隣の席の人が、“この楽器、こんなんなんですけど、直せますか?”って聞いてきたら、その瞬間からはっきり『仕事』になるわけです」。仕事と趣味の切り替えができなくなって、ちょっとしんどくなってきた。何か全然別のことを趣味にしたいけど、今は他のことをしている時間がなくて、と迷っているところだそうです。



修理中の楽器と根岸さん

 職人、というと、頑固一徹、一日作業台に向かったまま口も聞かないというイメージもありますが、根岸さんは、取材中何度も「こんなにしゃべってていいですか?」と聞いてくださったほど話し好きであたたかい雰囲気の方。
  自分でも、「お客さんとのコミュニケーションが大切」と思っておられるそうです。
ホームページや雑誌記事に必ず、“楽器談義、音楽談義のお相手まで。どうぞお気軽においでください”と書いているのは、そんな気持ちを表現したもの。「いずれは、演奏者と製作者が徹底的に話し合って、『こんな楽器つくれませんか』『よっしゃ、作ってみましょう!』っていうふうになりたいと思ってるんです」。



2011.7.5取材 八代田(ライター)



 根岸広輝弦楽器工房
 豊中市中桜塚2-25-12 ループトーワビル402号室
 TEL:06-6853-6696
 E-mail:nh19031972@mac.com
 http://homepage.mac.com/nh19031972/
 (根岸広輝さん)




 
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