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  不動産コラム
 


        不動産鑑定士 深澤俊男のコラム


Dr.Toshiの都市コラム 〜都心商業地の地価〜





第1回・・・土地の価格は、なぜこんなにわかりにくいのだろうか?

 今月から、コラムを連載させていただきます、Dr.Toshiこと深澤俊男です。 このコラムでは、土地の価格、特に都心商業地の地価についてお話しいたします。

 

■わかりにくい地価

 私が不動産業界で働き始めてから二十数年が経ちます。その間、1990年代初頭のバブル崩壊から大手金融機関の倒産、外資ファンド等による不良債権処理、J−REITスタート、ミニバブル、リーマンショックなどを経て不動産を取り巻く環境は大きく変化しました。そして、これらの過程で、金融機関など他業界からの人材の流入が促進され、海外のプレイヤーが持ち込んできた不動産投資の考え方が商業地などではスタンダードになり、収益用不動産が金融商品と同列の投資対象として取り扱われるようになりました。
 そんな中で、一部のプロからは、不動産の価格が以前に比べると分かり易くなったという意見もある一方、それ以外の一般の企業や個人の方々からはよくわからないという声が依然として多く聞かれます。それはなぜなのでしょうか。

 その理由は決して単純なものではないですが、そのうち主だったものをいくつか紹介しましょう。
   一つは、他の商品と比べて、『不動産はその個性が強いこと』 
   二つは、一般に、『価格を知る場面や必要性が少ないこと』
   三つは、価格を知る必要がある場合において、『何を拠り所にすればいいのかわからないこと』などが挙げられます。
 このコラムでは、上記三つについて、不動産の一形態である土地に着目し、その価格、すなわち地価についてお話ししていきましょう。

■土地はその個性が強いこと

 一つ目の、『不動産はその個性が強いこと』ですが、ここでは『土地はその個性が強いこと』と言い換えます。
 商品の場合、一般に、消費者ニーズを踏まえて生産量を計画・調整しつつ、供給者は生産する商品のコストに一定の利潤を上乗せして価格設定します。すなわち、その商品市場の需給関係に応じて価格が形成されます。
 一方、土地はどうでしょうか。土地も一般の商品と同様に基本的には需給関係で価格が形成されます 。ただし、土地は埋立地などを除き、新たに生産することができず、すでに存在する土地がその前提となります。そして、それらの土地は、場所を動かすことができない、土地は集積することにより地域を形成するなどの特性を持っています。これは土地が所在する地域との関連で様々な影響を受けることにつながります。
 一方、土地の大きさや形状は個々別々に異なり、また、それを分割または合体させることができ、多種多様な利用可能性を有しています。これらの結果、一般の商品と異なる点として、地域との密接な関係を持ち、また世の中に一つとして同じものは存在しないという個性を備えているのです。このように、土地は一般商品と比べ、その価格を形成する要因が複雑なのです。
 この要因を大まかに分解すると、(1)その土地が所在している地域としての価格水準、(2)マクロ的な経済情勢などの影響、(3)その土地それぞれの個性の3つに分かれます。 
  (1)の地域としての価格水準とは、一般に使われている相場に近いものでしょう。ただし、もう少し丁寧に説明すると、ほぼ同じ特性を有する一定の地域内においてその標準的な状態を前提とした場合における価格水準となります。なお、この場合の標準的な状態とは、土地利用を用途という観点で見た場合、駅前商業地であれば店舗や事務所といった建物の敷地として使われることが多いでしょうし、駅から離れかつ幹線道路に面していない場所は戸建住宅などの低層住居建物の敷地として使われることが標準的でしょう。
 また、土地自体の個性という観点で見た場合、標準的な状態とは、その土地自体に個性のない状態を指します。つまり、地域の中で標準的な使われ方をするにあたって、大きくも小さくもなく、形状が特に変わっているわけでもなく、角地など複数の道路に接していないなどが挙げられます。
 つまり標準的な状態とは、これらの個性のない状態を前提とし、地域としての価格水準とはそれを踏まえたものになるのです。
 相場とはこのような個性のない状態を前提としたものなのですが、冒頭で述べた通り、それぞれの土地は本来個性が有するため、相場とはかけ離れる場合があることに注意しなければなりません。
  (2)のマクロ的な経済情勢などの影響とは、景気やこれに関わる消費・投資などの動向、賃金や雇用状態、金利・為替などの金融動向、財政や公共政策による影響なども含まれます。具体的な現象としては、1990年代の金融不況、数年前のファンドバブルやリーマンショック、そして近時のアベノミクスなどによる各景況感などが挙げられ、これらはそれぞれの地域における(1)の価格水準に影響を与えます。
  (3)のその土地それぞれの個性とは、(1)で説明した他に、道路や隣地との高低差や地盤の傾きなどもあるでしょうし、近時トラブルになるケースがみられる土壌の状態や地下に何らかの埋設物がある場合も該当するでしょう。ちなみに、我々不動産鑑定士が用いる『不動産鑑定評価基準』では、住宅地において、@地勢、地質、地盤等、A日照、通風及び乾湿、B間口、奥行、地積、形状等、など16項目が、商業地において、14項目が例示列記されております。なお、この『不動産鑑定評価基準』については、またの機会に解説いたします。
 このように、土地価格は、(1)、(2)、(3)の各価格形成要因において、相互に影響を及ぼしながら形成され、特に(3)との関係でその個性を十分に踏まえつつ把握する必要があるのです。

 

■価格を知る場面や必要性が少ないこと

 二つ目の、『価格を知る場面や必要性が少ないこと』ですが、これは心当たりがあるのではないでしょうか。個人の場合、一生のうちで土地の価格を知る必要がある機会はそれほど多くないでしょう。マイホームを買う際に初めてそんなことを考えたと方も多いと思います。不動産を多く所有している資産家の方でさえも、普段は常に土地の価格を知る必要性をあまり感じていないと思います。

 一方、近時において、一定の条件を満たす企業等では、会計処理上、土地の時価を把握することが必要となる場合があり、その都度、何らかの客観的な方法で土地評価額を算定しなければなりませんが、それ以外の企業等においては、定期的にかつ一定の精度を有する土地価格を認識する機会はそう多くはありません。

 このように、そもそも価格を知る必要性があまりないことも、土地価格をわかりにくくしている理由の一つだと考えられます。

 ただし、今後については、土地価格を知る必要性がより高まってくることが予期されます。企業等については、グローバル化の影響で時価に基づく会計方針がさらに進むことが考えられるほか、合併・買収などのM&Aや資産承継などの機会が増えることなどにより、利害関係者等に対して説明責任を求められるなど土地の時価を適切に把握することが求められる場面が増えることでしょう。

 一方、個人についても相続の場面などでより精緻な価格を把握することが求められ、それ以外の取引などにおいても自身の資産価値に関する意識が高まると同時にその価格を精緻に判定しようとする場面が増えていくのではないかと思われます。

 

 

■何を拠り所としていいのかわからないこと

 三つ目の、『何を拠り所にすればいいのかわからないこと』ですが、土地の価格は例えば株式市場のようにリアルタイムで各株価が把握できるようにはなっていません。近時では不動産業者などがインターネット上に掲載している不動産物件の売買情報や賃貸情報を手軽に見ることも可能ですが、地域により情報量や内容等に偏りがありますし、また、不動産取引を前提とした募集活動に基づく価格または賃料であり、適正なものかどうか見極めにくい経験をされた方も多いと思います。
 では、その拠り所はないのでしょうか。
 実は、過去数十年にわたり、国または地方公共団体が実施している公的土地評価の制度があり、これが拠り所の一つとして考えられます。全国規模で行われているその制度とその具体的な内容については、次号以降でお話ししていきましょう。

(次号へつづく)

※深澤俊男の略歴
 深澤俊男不動産鑑定士事務所 代表
  http://www.fukazawakantei.com
  株式会社アークス不動産コンサルティング 代表取締役社長
  http://www.arc-s.biz

 詳しい経歴はこちら

     

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